病める時代のティーンエイジャー
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教えない 知り過ぎてるから教えない
口に出すと悲しみは 次の悲しみを生むだろう
知りたい それでもまだまだ知りたい
積まれた理屈を越えて その退屈を越えて
Mr.Children♪ 『箒星』
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※画像の女性は本編とは無関係です
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性欲モンスター(男)と肉欲クリーチャー(女)がスクランブル交差する街、渋谷。
織葉(おりは)は闊歩する若者たちを眺めながら、我が国の性教育のあり方を憂いていた。
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秋の夜風に吹かれるまま歩く。
都会の電光は、まるで『光』と言う名の闇のようだ。
宇宙に瞬く星々さえ、その輝きの中に葬り去っていく。
果てしない闇の中で、月だけが煌めいていた。
今、織葉は未知なる宇宙に思いを馳せていた。
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↓織葉のセルフイメージ
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↓実際の織葉
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そう…未来はいつだって未知なんだ。
未知なる女性と出会い、そして未知のまま別れていくのだろう。
それでも、その出会いに意味があったと言えるなら…
織葉は夜空を仰ぎ、見えるはずも無い流れ星に祈った。
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月は未知へと誘(いざ)なう道しるべ。
同じ月に照らされた、未だ出会わぬ二人。
さぁ!今夜は闇を切り裂く彗星の様な恋をしよう!
そして甘酸っぱい野苺の様なキスをするのさ!
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道ゆくぴちぴちギャルに声をかけていく。
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1人目 シカト
2人目 シカト
3人目 シカト
4人目 シカト
5人目 シカト
6人目 シカト
7人目 シカト
8人目 シカト
9人目 シカト
10人目 シカト
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11人目シカト
12人目シカト
13人目シカト
14人目シカト
15人目シカト
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16人目シカト
17人目シカト
18人目シカト
19人目シカト
20人目シカト
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織葉が血まみれになり、路上で死にかけていたその時。
前方の十字路を曲がり、歩いてくる女の子。
白いパーカーがよく似合っている。
街のスピードと全く調和していない。
その少し不自然な歩き方が目に留まった。
ナンパのカリスマasapen氏なら彼女をこう呼ぶのだろう。『タートルレディ』と。
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堂々と正面から声をかける。
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拝啓asapen氏。
六本木の空から見てて下さい…
織葉の必殺声かけルーティーンを…
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ビタ止め。
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織葉「お姉さん遊ぼ(╹◡╹)」
女子「なになに?」
織葉「暇そうじゃん遊ぼ(╹◡╹)」
女子「どーしよっかなw」
どこかぎこちなく、無機質な笑顔を浮かべる彼女。
前歯にピンクのグロスが付着している。
そういった無頓着さ。
そこはかとなく漂う無気力感。
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そうだ…
きっと彼女は…
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メンヘラ(スト値:6)
特徴:19歳。巨乳。無気力感。やる気なし。巨乳。織葉に対して食いつきなし。巨乳。巨乳。
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織葉「ねーねー音楽何好き?(╹◡╹)」
メンヘラ「ボカロ」
織葉「えーー♪俺もボカロ!てか俺がボカロ!」
メンヘラ「???」
織葉「とりあえずカラオケ行こヾ(๑╹◡╹)ノ"」
メンヘラ「良いけどw(苦笑)」
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カラオケへ向かう道すがら。
お互いの話をする。
彼女からは、ビックリする程IOIを感じない。
だけど嫌がってもいない。
無機質な表情を浮かべる彼女は、退屈と戦っている様に見えた。
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カラオケ in
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運ばれて来たドリンクで喉を潤す。
こちらを見ないでスマホをいじり続ける彼女。
聞かれた事には短く答える。
作り笑いをする事は、もう辞めていた。
それは、2人の距離が少しだけ縮まった事を意味していた。
彼女の佇まいを、人によっては苦々しく思うのかも知れない。
だけど、織葉は不思議と嫌な気分じゃなかった。
ただちょっと人より不器用なだけ。
無機質な表情を浮かべる彼女は、寂しさと戦っている様に見えた。
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当たり障りのない会話が続く。
今日は彼氏とデートした帰り。
一蘭のとんこつラーメンを一人で食べて来た。
ボーカロイドが好き。
ツイッターが好き。
イラストを描くのがすごく上手だった。
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少しお互いの事を話したところで。
ずっと気になっていた事を聞いてみる。
織葉「あのさ…ピアス」
メンヘラ「うん」
織葉「ピアス…ずいぶん沢山あけてるんだね」
メンヘラ「そう!好きなの!」
彼女は耳だけでなく、口、舌、指にもピアスを着けていた。
メンヘラ「好きなの。自傷。腕もホラ」
シャツの袖を捲る彼女。
そこには、無数のリストカットの痕があった。
織葉「へぇ。触っていい?この腕の傷痕さぁ…なんかさぁ…生姜とか摩り下ろすヤツ。アレなんて言うんだっけ?アレみたい(╹◡╹)」
メンヘラ「きゃはっwなにそれww」
織葉は彼女の自傷行為について『何も思わない』事にした。
織葉が彼女と知り合って、たったの数十分。
彼女のこれまで生きてきた道。
彼女がどんな気持ちで自分の身体を傷つけているのか。
それを想像するには、あまりに彼女の事を知らな過ぎる。
そんな織葉が自分勝手な尺度で、何かを言う事は、とても軽薄で傲慢な事だと思うから。
一つ言える事は、織葉にとって、彼女は紛れもなく『未知』だという事だけだった。
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メンヘラ「飽きた。もうそろそろ出たい」
織葉「そうだね。出ようか(・_・;」
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カラオケ out
相変わらずIOIは感じない。
次の行き先も決まっていない。
若干、主導権を奪われている事は否めないだろう。
だけど彼女は織葉から離れようともしていない。
メンヘラ「ガールズバーでも行こうかなぁ」
織葉「そんな所よりも良いところがあるよ」
メンヘラ「どこ?」
織葉「ホテル」
メンヘラ「チャラい…」
織葉「嫌?」
メンヘラ「まあ、嫌では無いけど…」
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織葉「とりあえずお風呂入ろ(╹◡╹)」
メンヘラ「どっちでも良いよ」
織葉「一緒に入ろうよ(╹◡╹)お湯はっといたから」
お風呂にスマホを持っていく彼女。
音楽を流す。
神聖かまってちゃんの有名なナンバーだ。
織葉「俺も好きだよ。『ロックンロールは鳴り止まない』」
ドサクサに紛れて巨乳を揉みしだく織葉。
メンヘラ「なんかww客みたいwww」
織葉「ああ、夜の仕事もしてるんだ?」
メンヘラ「うん。もうやってないけどね…」
無機質な表情を浮かべる彼女は、孤独と戦っている様に見えた。
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お風呂out
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織葉「あのさ、君はS?M?(╹◡╹)」
メンヘラ「見たらわかるでしょw ドMだよw」
彼女の身体には至る所に青アザが出来ていた。
どうやら彼氏とは随分と「過激」なプレイをしている様だ。
メンヘラ「髪の毛とか引っ張られたり、ベルトで打たれたり。あと首絞めて欲しい。」
織葉「あ、ゴメン。そーゆうのはムリ(╹◡╹)だって俺もドMだからヾ(๑╹◡╹)ノ"」
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あーいっ!あーいっ!あーいっ!あぁーいっ!
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織葉「ゴメン。俺は終電で帰るけど、君はこのまま泊まっていく?」
織葉「この時間から??」
メンヘラ「こんな部屋に一人で残されても、やる事無いし」
織葉「そだよね……ねぇ、さっきキスした時さ、君とんこつラーメンの味がしたよ(╹◡╹)」
メンヘラ「はぁ!?どんなタイミングだよwwてか、そーゆう事女子に言わないからねフツウww」
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ホテル out
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やれやれ。
野苺の様なキスをするつもりが、とんこつラーメン味のキスとは。
拝啓asapen氏。
こんな冴えないナンパ師を、どうか笑ってやってくれ。
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それにしても…
無機質な表情を浮かべる彼女は、一体何と戦っていたのだろうか?
織葉にとって、彼女は最後まで未知のままだった。
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…違う。そうじゃ無いだろう。
彼女は何とも戦ってなんかいない。
ましてや、逃げてもいない。
彼女はずっと、ただありのままでそこに居た。
織葉は出会った時からずっと自分勝手な尺度で彼女を見ていた。
結局、織葉は最後まで軽薄で傲慢だった。
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織葉「バイバイ!朝まで居らんなくてゴメンね(╹◡╹)」
手を振り、織葉はそう言った。
メンヘラ「てか、お兄さんさww自分の半分くらいの年齢の子に、あんな事されて悦んでる顔がガチでキモかったんだけどwww きゃははwwバイバイ!w」
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織葉は名残を惜しみながら、もう一度振り返る。
そして、薄気味悪い満面の笑顔でこう言った…
…
おしまい。