なっちと織葉と阿部さん
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僕らは思っていた以上に
脆くて 小さくて 弱い
でも風に揺れる稲穂のように
柔らかく たくましく 強い
そう信じて
Mr.Children♪ 『かぞえうた』
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100リットルの精液が垂れ流される街、新宿。
冬の始まりの匂いが微かに鼻腔をくすぐる。
街路樹の下では、枯れ草がまるで囁く様に散り積もる。
織葉はこの街でとある人物を待っていた。
アポ相手の女?
既セク?
それとも、織葉の精神に深い爪痕を残し去った『あの人』?
いずれも違う。
待ち合わせの相手は男だ。
それも凄腕ナンパ師だ。
その男の名は『なっち』。
◾︎ナンパを起点に理想の人生を追求する
◾︎ツイッター
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↓なっち氏に対する事前イメージ
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程なくして、一人の青年が織葉の前に現れた。
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青年「織葉さん、ですよね?」
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↓実際のなっち氏
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織葉「はい、そうでしゅ(╹◡╹)」
なっち「初めまして!あ、ホラ!この本、ちょうど今読んでるんですよ」
『あなたは、なぜ、つながれないのか』
鞄から織葉の愛読書(バイブル)を取り出し、屈託無く笑う好青年。
この本を最初の話題に出したという事は、このブログも事前に読んでくれているという事だろう。
こういった相手へのリスペクトを日常的に自然にやっている方なのだろう。
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織葉は、この時点でなっち氏が凄腕のナンパ師である事を確信していた。
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それにしても…
その男はあまりに爽やかだった。
いや、爽やか過ぎた。
そして織葉は密かに予感…
いや、期待していた。
今夜、この男に抱かれる事を…
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↓織葉のセルフイメージ
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↓実際の織葉
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織葉が新しい性への扉を開きかけているとも知らず、陽気な声で彼は言った。
なっち氏「とりま、居酒屋でも行きますか!」
織葉「あ、うん。そーだね(╹◡╹)」
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居酒屋 in
改めて、目の前のなっち氏という男に目を向ける。
爽やかな風貌だが、そこらの青年とは明らかに違う。
今まで何かを見てきた様な。
それでいて、これから何かを見出していく様な。
不思議な瞳をした青年だった。
そして織葉は彼の瞳の奥に、ある種の堅い決意めいた物が輝いている様に見えた。
なっち氏「実はずっと前から織葉さんにお会いしたかったんですよ!」
織葉「光栄でしゅ(╹◡╹)」
小一時間ほど話をした。
ナンパとは。
恋愛とは。
女とは?
そして…『自信を育てる』とは?
なっち氏は、ナンパのその先にある物に焦点を当てていた。
そう言えばどっかの誰かが言っていた。
『ナンパは経るもの』だと。
それでは一体、織葉にとってナンパとは?
男を磨くため?
SEXを得るため?
そして今は『あの人』を早く忘れるため?
どうやら、今の織葉からはカッコイイ答えは出なさそうだ。
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なっち氏「せっかくなんで一緒にナンパやりましょうよ!」
織葉「おおう!望むところでしゅ(╹◡╹)」
こんな風な、新鮮な合流はとても良い!
凄腕と合流出来るまたとない機会に心が震えた。
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なっち氏と2人街に立つ。
ゆっくりと歩き始める2人。
身を切る空気は冬のそれに変わっていた。
…ふと『あの人』と歩いた交差点に差し掛かった。
フラッシュバックする記憶のカケラ。
織葉の心の中に今も巣食うその女性。
あの日の記憶…
辿る。新宿三丁目。
『あの人』は織葉にこう言った。
「今は私の事よりも自分の心配をしてください。」
突き放された?織葉はそう感じた。
もう必要とされなくなった?
彼女の優しさにすら傷ついた。
被害妄想。
末期症状。
全てもう遅い。
自分の狡さを棚に上げ。
不倫相手に求め過ぎた馬鹿な男が居ただけ。
織葉は、終わりなき終焉の螺旋で踠いていた。
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織葉「あ、あれれ?(*・艸・) なっち君が居ないや!??」
なんと、早速なっち氏はJDと並行トークして、和んで消え去っていったのだった!!
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織葉…
未だゼロ声かけ(地蔵)
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道行くピチピチギャルを眺めていく…
いや、てゆうか…
ド平日の深夜…ターゲットが少ねぇ(/ _ ; )
が!その時!!
目の前をバンギャ風の女子が通りがかる。
コイツだッ!!
光の速さで声をかける織葉。
織葉「こんばんは!遊ぼ(╹◡╹)」
織葉「ねえってば!(╹◡╹)」
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ビタ止め。
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バンギャ スト値5
特徴:10代、メンヘラ、細い、古着、メンヘラ。
あとメンヘラ、あと多分リスカ。
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どことなく不安定な様子を醸し出すバンギャ。
バンギャ「ちょっとなら遊でもいいよーバンドのライブ行ってきたんだー」
織葉「ああ、そうなんだね(╹◡╹)楽しかった?」
バンギャ「うん♪あー明日学校だるいな!」
即系の匂いがした…
てゆうか、即系の匂いしかしなかった。
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弾丸即を決める時の織葉のルーティンがある。
織葉「今日、寒く無い?手、冷たくてさ!ちょっと触ってみ(>_<)」
バンギャ「あ、本当だー笑」
そのまんま手を握る。
織葉「恋人繋ぎ?普通の繋ぎ方?どっちが好きなの?(╹◡╹)」
バンギャ「うーん、こっちかな?まあどっちでも良いけど!」
そのまま手を繋ぎ、2人は現実と言う名の監獄から逃避行するのであった。
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ホテルに向かう道すがら会話をする。
オマンレンにオチンロンを突っ込むまでは、1秒たりとも気は抜けない。
女というのはそれだけ心変わりの激しい生き物だからだ。
キスをしても、ホテル前でグダる女性。
ホテルの中でさえグダりだす女性。
そんな女性を何人も見てきた。
いずれも「なんかヤダ」という曖昧な理由だ。
極めて原始的で本能的な理由で、男は地獄に突き落とされる。
男というやつは、いつまで経っても女性という未知の生命体に翻弄される運命なのかもしれない。
バンギャ「あーあー学校行きたくないなぁ」
織葉「学校がイヤなの?」
バンギャ「現実逃避したーい」
織葉「そうだね、これから2人で現実逃避しに行こう」
バンギャ「うん…」
こういったメンタリティを持つ女の子を織葉は「メンヘラ」などと呼んで、心のどこかで小馬鹿にしていたのかも知れない。
生き辛さを感じながらも、彼女達は彼女達の現実を受け止めて行きてる。
今の織葉だってそうだ。
『あの人』に抉り取られたままの心臓。
それがドーナツの様な空洞を作り上げている。
事実この数日後には、真っ白な病室で、清潔な襟をした精神科医のお世話になる事になるのだから…
そして、その精神科医とこんなやり取りをするだろう…
精神科医「うーん…こんな風になるなんて、貴方らしく無いよね?どうしてその女性にここまで執着しちゃうのか。」
織葉「そうなんです、先生。僕はこう見えてプレイボーイなんですよ。他の女の子だって身の回りに沢山いるんですよ。」
精神科医「もしかして彼女は〈運命の人〉だったりしてね?笑」
ちょっと笑えないジョークだった。
織葉の時計は止まったままだという事だろうか。
再び、新宿三丁目の交差点を超える。
今は目の前のバンギャとの会話に神経を集中させる。
手を繋いだままで逃避行を続ける二人。
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そして…
それはさておき…
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直後…
なっち氏からLINEがきた。
なっち《今どこです?南口戻りましたか?》
織葉《一声がけ目でテルーホ イン》
なっち《え!?神www》
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なっち氏と再び合流したいので、早めにコトを終わらせなくては。
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余韻に浸る間も無くバンギャに話しかける。
織葉「シャワー浴びる?」
バンギャ「私、あとで良い〜」
織葉「じゃあ、先に浴びてるからね」
バンギャ「うん」
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なっち氏と合流し直す時間あるかなぁ?
彼ももう連れ出してるかもしれないしな。
そんな事を考えながらシャワーを浴びていた。
ものの5分程度の話だ。
すると、けたたましく部屋の電話が鳴り響いていることに気がついた!!
フロントからだ。
いやいや、出てくれよバンギャ。
いや、しかしおかしいな?
まだ時間はたっぷりあるはずだが?
何のための電話だろうか?
訝しがりながら、濡れた手で受話器を取る織葉。
フロントのおばちゃん「あのぅ、、、お連れ様帰られましたけど?良いんですか?」
…
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青ざめる織葉。
まさか、泥棒??美人局??
いやーな、汗が頬を伝う(実際はシャワー浴びた後で拭いてないだけ)
ブランドの時計。
財布の中身。
カバンの中身。
急いで確認をする。
無くなっているものは無さそうだ。
取り敢えず胸をなでおろす。
何にしても、ここに長居する理由は無さそうだ。
なっち氏もどうやら帰宅したらしい。
光の速さで着替える織葉。
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…テルーホ マッハアウト!!
結局はただのメンヘラな女の子だったんだな…
ちょっと寂しい思いをさせてしまったかな?
いや、そう思うのは織葉の傲慢だろう。
ふと…またメンヘラだとか、彼女を差別的に捉えている自分に気がついた。
彼女は今頃家でシャワーを浴びてるのだろうか?
ご飯でも食べてるのかな?
織葉は彼女の現実逃避の相手に、ちょっとでもなれたのだろうか?
誰の心も、自分が思っているよりも脆くて弱い。
皆ただの寂しがり屋なのだから。
だからこそ、誰かに寄り添っていたい。
だからこそ、誰かに愛される今日(イマ)が欲しい。
だからこそ…
織葉もバンギャも、そして『あの人』も、そんなイマを懸命に探しているのだろう。
…
…
そんな事を考えながら帰路につく。
…
そして…
…
…
…家に着いて、シコッて寝た。
おしまい。