続・アジアの純真
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シーツにくるまって夜の闇を泳ぐ
密室に住む熱帯魚 それが私達です
罪深き秘密をこの胸にしまって
墓場まで持って行けるかな
Mr.Children♪ 『Love is Blindness』
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※画像の女性は本編とは関係ございません
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真夏の夜。
記録的な猛暑が続く今年の夏。
今夜も熱帯夜。
そして、人々は熱帯魚。
愛欲という名の餌を求める熱帯魚の群れ。
この街の名は渋谷。
織葉もまた熱帯魚の一匹となりこの街を回遊していた。
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↓織葉のセルフイメージ
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↓実際の織葉
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織葉は火照った身体から流れる汗と心に巣食う闇をハンカチで拭った。
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色とりどりの女の子と素敵な恋をしよう。
そして愛の大海原で溺れてしまおうよ！
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…いつもの様にガンシカの雨を浴びる
こんなの慣れっこさ！
…10人目 シカト
…20人目 シカト
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織葉がナンパを辞めて、バスケ部に戻ろうかと考えていたその時！
茶色い髪をなびかせたアイドルフェイスの女の子が視界に飛び込んだ。
シュッ！！
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織葉「こんばんみ（╹◡╹）」
アイドルフェイス「……クスクス」
織葉「遊ぼ（╹◡╹）」
アイドルフェイス「……ニヤニヤ」
織葉「ん？どーしたの？」
アイドルフェイス「●●さん（織葉の本名）」
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織葉「な、なんで？？アレ？？どっかであったっけ？？（╹◡╹）」
リアル知り合いに声をかえてしまったか？
仕事関係で繋がりのある女か？
それともリア友の連れかなにか？
アイドルフェイス「●●さん忘れてるw 去年、シブヤで会った、台湾人」
織葉「ああーー！！●●ちゃん！！アカ抜けたねぇー分かんなかったよ(・∀・)」
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なんと！
前回のブログ『アジアの純真』でナンパした女の子だった。
奇しくもまた同じ街でナンパした事になる！
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チャイナ （スト値 7.5）
特徴:20歳前後。茶髪。イマドキJD。アイドル顔。台湾からの外国人留学生。高学歴。親日家。渋谷大好き。
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織葉「今日は渋谷で何してるの？」
チャイナ「明日、祖国の台湾に帰るので、その前に大好きな渋谷の街を見て回ろうと思って、、、」
その横顔はとても名残惜しそうな。
それでいて、満ち足りた様だった。
1年も経たない間に、彼女はあの頃よりも確実に大人の女になっていた。
そして街を回遊する熱帯魚同士が惹かれ合う。
幾千幾万匹が回遊するアクアリウムの中。
神様がくれた偶然。
なんてドラマチックな再開。
織葉はこの再開を『運命』と呼ぶ事に戸惑いなど無かった。
ナンパの神様は居る。
そう確信した。
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織葉「ホテル行こ（╹◡╹）」
チャイナ「はい」
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渋谷の街を手を繋ぎ歩く。
そう言えば『あの人』ともこの道を歩いたな。
フラッシュバックする映像。
思い出したのは、心が壊れるまで愛した『あの人』の事。
それを過去と呼んでしまうには、あまりに僅かな時間しか経っていない。
透き通るような、澄みきった美しさを持った女性。
それはオンリーワン中毒とは少し違っていた。
狂ってしまうほど愛してしまった。
恋愛というより洗脳に近い日々。
『あの人』の全てを支配したいという狂気。
織葉の心と頭と体は少しずつ分裂していった。
深い不安感の中に置き去りにされた。
寝ても覚めても離れていても、『あの人』を常に近くに感じている。
進む事も引き返す事も出来ない。
ただ心の中には深く重たい闇。闇。闇。
今フラッシュバックしているのは、そんなあの日の出来事…
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織葉「あ、ホテル、ここにしよう（╹◡╹）」
チャイナ「うん」
気づけば『あの人』と毎週愛し合ったホテルの前に着いていた。
無意識に偶然にもこのホテルを選んでいた…
…いや、違う。
確信犯的に意図的にこのホテルを選んでいた。
『あの人』の残像を少しでも感じたかった。
きっと今もまだ…
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織葉「あれから、どうしてたの？」
チャイナ「彼氏が居たけど別れました」
織葉「そうだったんだね」
チャイナ「はい、織葉さんは？」
織葉「俺も一緒。心を病むまで恋をして、そして失った」
チャイナ「そうだったんですね」
織葉「さ、時間が無いシャワー浴びよ」
チャイナ「はい」
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熱帯夜に火照った身体をぬるいシャワーで洗い流す。
織葉「元カレの事、聞いても大丈夫？」
聞けば彼女も辛い恋を乗り越えてきた様だ。
他人が聞けばよくある恋だとしても。
織葉にはとても他人事だなんて思えなかった。
きっと彼女も同じ。
過去の残像に囚われた奴隷なのだろう。
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歳月がやがて全てを忘却に導いたとして。
その時人は強くなっているのだろうか？
それとも弱くなっているのだろうか？
解らない。
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帰らぬ人を想い。
誤魔化すようにベッドに潜り込む男女。
偽りの愛で。
身を焦がす業火に抗おうとする。
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織葉「明かり、消すね」
チャイナ「はい」
織葉「こっちにおいで」
チャイナ「元カレの名前、●●さん（織葉の本名）と同じ」
織葉「じゃあ今日は沢山名前を呼んで良いんだよ」
チャイナ「…」
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織葉「さあ、いくよ」
チャイナ「…」
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↓織葉の父
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織葉「前回エッチした後さ、帰り際冷たかったよね？ww 振り返りもしないんだもんww 嫌われたのかと思ってたよ」
チャイナ「それはこっちのセリフww」
織葉「そうだったんだね。お互い誤解してたみたいだね(・Д・)」
チャイナ「うん」
織葉「泣いても良いんだよ」
チャイナ「うん、、、」
声を上げて泣く女の子。
頭を撫でてやる織葉。
なけなしの優しさを持ちよって慰め合う。
ありふれたラブホテルの一室。
束の間。
安らぎを求めた熱帯魚が二匹。
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泳ぎ疲れた熱帯魚は住処に帰る。
すり鉢状のこの街の中心。
そこに吸い込まれていく。
道玄坂。
織葉「明日にはもう海の向こうなんだね」
チャイナ「うん」
織葉「少しは心の闇が晴れたら良いけど」
チャイナ「織葉さんは優しい人」
織葉「そんなんじゃないよ」
そうだよ。
そんなんじゃない…
半分は自分に言ったセリフなのだから。
織葉「また日本に来たら連絡してよ」
チャイナ「うん、必ず連絡するね！」
歳月がやがて全てを忘却に導いたとして。
その時人は強くなっているのだろうか？
それとも弱くなっているのだろうか？
解らない。
それでも。
彼女は健やかな強さを胸に秘めて。
明日、海の向こうへと帰っていくのだろう。
織葉はもう一度ストリートナンパと向き合う事を決意した。
自分の中に潜んでいた弱さの全て。
狂気の全て。
それと向き合い続ける為に。
もっと素晴らしい自分と出会うために。
その為に、これからも織葉は街で声をかけ続ける。
そう決めた。
いつか『あの人』の事を単なるオンリーワン中毒だったと言える日が来るまで…
JR渋谷駅。
改札に吸い込まれていく彼女。
今度は彼女が振り返ってくれた。
そして織葉に向かって笑顔で手を振った。
…
おしまい。
